AIで仕事がなくなるのが不安。未経験からITに転職すれば安心なのか?
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ニュースで「AIに仕事を奪われる」という言葉を見るたびに、不安になる。だったら、これからの時代に強そうなIT業界に転職すれば安心なんじゃないか。そう考えて、未経験からのIT転職を検討する人が増えています。
先に結論を言うと、IT業界に行けばAIの影響を受けないわけではありません。IT業界の中にも、AIによって大きく変わる業務と、当面は人の手が必要とされ続ける業務の両方があります。「業界を変えれば安心」ではなく、「どんな業務が変わり、どんな業務が残るのか」を知った上で選ぶことが重要です。
「仕事がなくなる」ではなく「タスクが変わる」
AIと雇用の関係を調べたOECD(経済協力開発機構)の研究(Nedelkoska & Quintini, 2018)では、仕事を「職業単位」ではなく「タスク単位」で分析しています。その結果、OECD加盟国の職業のうち、自動化の可能性が高い(70%超)仕事は約14%、自動化の可能性が中程度(50〜70%)の仕事は約32%とされています。
出典:OECD Working Papers No.202「Automation, skills use and training」(2018年)
この研究が示す重要な点は、「一つの仕事がまるごと消える」ケースは限定的で、多くの仕事では「一部のタスクが自動化され、残りのタスクに人の力が必要とされ続ける」という変化が中心になるということです。定型的・反復的な業務ほど自動化されやすく、対人対応や創造性、状況に応じた判断を伴う業務は、比較的自動化されにくいとされています。
つまり「AIで仕事がなくなるかどうか」という問いより、「自分が今やっている業務のうち、どの部分がAIに置き換わりやすいか」を考える方が、実態に近い問いだと言えます。
IT業界も、自動化と無縁ではない
「ITに行けば安心」という発想の裏には、「IT業界=AIを作る側だから影響を受けない」というイメージがあるかもしれません。しかし、IT業界の中にも自動化の影響を受けやすい業務があります。
- 定型的なコーディング作業やテストコードの生成
- 決まったフォーマットに沿ったドキュメント作成
- 単純なバグ修正やコードレビューの一次チェック
一方で、次のような業務は、当面は人の役割が大きいとされています。
- 顧客や他部署とのすり合わせを伴う要件定義
- 複数のシステムや制約を踏まえた設計判断
- 想定外の不具合やトラブルへの対応
日本国内の状況について、労働政策研究・研修機構(JILPT)が2025年に実施した働く人約2.2万人を対象とした調査では、職場でAIが利用されていると回答した人が12.9%、個人的にAIを利用している人が8.4%、生成AIの利用は6.4%という結果が出ています。同調査では、AIは業務の構成を大きく変えるというより、既存の業務を補完し、質やスピードを高める役割を果たしている傾向が見られています。
出典:JILPT 調査シリーズNo.256「AIの職場導入による働き方への影響等に関する調査」(2025年)
これらのデータから見えるのは、AIが「人の仕事を丸ごと奪う」というより、「業務の中身を少しずつ変えていく」段階にあるということです。未経験からITを目指す場合も、この変化を前提に、どの領域で経験を積むかを考える視点が必要になります。
簡易チェック:今の仕事を2つに分けてみる
IT業界に限らず、今の自分の仕事を見直すときにも、同じ視点が使えます。今担当している業務を、次の2つに分けてみてください。
- AIに任せられそうな部分:定型作業、決まった手順の繰り返し、フォーマット化された文書作成など
- 人が必要とされそうな部分:相手の状況を踏まえた調整、判断が分かれる場面での意思決定、初めて起きた問題への対応など
この仕分けをしてみると、「今の仕事がまるごとなくなる」という不安よりも、「今の仕事のどの部分の経験が、この先も価値を持ち続けるか」が具体的に見えてきます。今の仕事を続けることへの不安をさらに整理したい場合は、AI時代に今の仕事を続けて大丈夫?|転職より先に考えたい3つのことも参考になります。
それでも未経験からITを目指す価値はあるか
自動化の影響がある業務が一部あるとはいえ、未経験からITへの転職自体を否定する必要はありません。むしろ、次のような視点を持って業界や職種を選ぶことで、AIと共存しながら経験を積んでいける可能性は十分にあります。
- 単純作業だけでなく、要件定義や調整業務にも関われる環境を選ぶ
- AIツールを使いこなす前提でのスキル習得を意識する
- 特定の業界知識(医療、金融、製造など)とITの両方を組み合わせられる領域を視野に入れる
AIに仕事を奪われやすい人・奪われにくい人の違いをさらに詳しく知りたい場合は、AIに仕事を奪われる人・奪われにくい人の違いとは?で解説しています。将来性のある仕事の考え方全般については、将来なくならない仕事とは?職種よりも大切な考え方も参考にしてください。
未経験IT転職で、確認しておきたいこと
「AIが不安だから」という理由だけでIT業界を選ぶと、入社後に「思っていた仕事と違った」となりやすいこともあります。未経験からの転職では、次の点を事前に確認しておくことをおすすめします。
- 入社後、どんな業務から任されるのか(定型作業中心か、幅広い業務に関わるか)
- 研修体制や、未経験者がスキルを積み上げていく仕組みがあるか
- AIツールの活用を前提とした業務フローになっているか
未経験からの転職全般で失敗しないために確認したいことは、未経験転職が不安な人へ|失敗しないために確認したい6つのことでも詳しく解説しています。何から始めればいいか分からない場合は、転職活動、何から始めればいいかわからない人へも参考にしてください。
「業界を変える」より先に、「経験の活かし方」を考える
AIへの不安をきっかけにIT業界を検討すること自体は自然な流れですが、未経験からの転職では、今持っている経験がゼロになるわけではないという点も見落とされがちです。
前職で培った業界知識や、顧客対応・調整の経験は、IT業界の中でも「特定の業界向けのシステムに強い人材」「現場と開発をつなぐ役割」として活かせることがあります。自分にどんな仕事が向いているか判断に迷う場合は、自分に向いてる仕事がわからない人へ|仕事内容より確認したい4つの相性も、職種名だけで考えない視点として参考になります。
未経験の分野に飛び込むこと自体への不安が強い場合は、転職して後悔しやすいパターンを事前に知っておくことも役立ちます。転職して後悔しないか不安な人へ|後悔しやすい3つのパターンと防ぎ方もあわせて確認してみてください。
一人で判断がつかない場合
「AIが不安」という気持ちから、「とりあえずITに行けば安心」という結論に飛びついてしまう前に、今の自分の経験がITでどう活かせるのか、あるいは他にどんな選択肢があるのかを、一緒に整理することもできます。
未経験でITへ行くべきか迷っている場合も、今の経験を活かせる仕事が他にあるか知りたい場合も、LINEで今の状況を聞かせてください。転職を決めていない段階でも構いませんし、希望があれば、未経験から挑戦できる求人の紹介まで対応します。
よくある質問
AIによって、IT業界の求人自体が減っていくのでしょうか。
定型的な作業を中心とした求人は影響を受ける可能性がありますが、要件定義や設計、AIツールを使いこなす人材へのニーズはむしろ高まっているという見方もあります。求人の中身をよく確認することが重要です。
未経験からITに転職するなら、何を優先して選べばいいですか。
単純作業だけを任されるのではなく、幅広い業務に関わりながらスキルを積める環境かどうかを確認することをおすすめします。研修制度の有無も重要な判断材料になります。
IT以外で、AIの影響を受けにくい仕事はありますか。
対人対応や状況判断を伴う業務は、業界を問わず比較的影響を受けにくいとされています。IT業界に限定せず、自分の経験の中でそうした要素がある仕事を探す視点も有効です。
この記事の要点
- OECDの研究では、仕事は「職業単位」ではなく「タスク単位」で自動化の影響を受けるとされている
- IT業界の中にも、自動化されやすい業務と、当面は人が必要とされる業務の両方がある
- JILPTの調査では、AIは業務を丸ごと置き換えるより、既存業務を補完する役割が中心という傾向が見られる
- 今の仕事を「AIに任せられる部分」「人が必要な部分」に分けてみると、不安の正体が具体的に見えてくる
- 未経験からIT転職を検討する場合も、入社後の業務内容や研修体制を事前に確認することが重要